ハロウィーン論争





Italy~Como

夏休みが長いわりには祝日の少ないイタリア。今年は11月1日の祝日〝Tutti Santi=諸聖人の日〟が金曜日に当たり、土曜日の〝Morti=死者の日〟も休日になり、待ちに待った久しぶりの連休となりました。

〝諸聖人の日〟は聖人と殉教者を敬する日、〝死者の日〟は死者の魂に祈りを捧げる日、としてカトリック教会の重要な祝日です。聖書に登場する聖人に由来した名前を子供につけるのが伝統的なイタリアの習慣でもあるように、聖人はイタリア人にはとても身近な存在です。その子供達を見守ってくれている聖人達に感謝をするという意味もあり、カトリック教徒の人々はもちろんミサにも行きますが、日本のお盆と似た風習で、このお休みは亡くなった先祖を尊む目的で御墓参りにも出向きます。イタリアでも一般的には菊の花が死者に捧げる花とされており、この週末もカラフルな菊の花を手に墓参りする人々の姿でいつもは和やかな墓地も賑わっていました。

休日前夜の31日はハロウィーン。イタリアでも近年すっかり浸透してしまったこのハロウィーンの存在が、この時期になると決まったように論争を巻き起こします。もともとハロウィーンもキリスト教徒の影響下におけるケルト文化のお祝いだそうですが、「Trick or Treat(甘いものか、いたずらか)」、と言いながら仮装した子供達が近所の家にキャンディーをもらいに歩く風習はまさにアメリカ文化の輸入品。それがどうもカトリック教会の保守派のおかんむりを誘うようです。

今年もある小学校でハロウィーンの仮装をして学校にくる事が許可された事に反論した母親が、地元教会の神父様も巻き込み、イタリアン・カトリックとは関係ない風習が学校で導入されるべきなのかと、新聞紙面で新たに話題となりました。ただのお遊びだからいいではないかとする見解から、バレンタイン同様消費文化の象徴で宗教とは別とした意見や、宗教のお祝いを軽卒にした不謹慎な風習でモラルの秩序に反するので断固として阻止するべきとの強豪派など。最後には、教えの場では全ての宗教が尊重されるべきなら、クリスマスにちなんでイエス様の話をするのはイスラム教徒の人の人権無視だ、とまで論議が展開されていました。この論議もそもそもの発端は、本来ならば宗教のお祝いが重要視されるべきなのに、イタリアン・カトリックとは関係ないアメリカから上陸したハロウィーンのお祝いに乗っ取られたかのようになってしまった事に対する、いらだちの表れとも捉えられます。それでなくても教会ばなれが進む若者たちは、バーやディスコで企画されたハロウィーン・パーティーの方が気になるのは確かです。

生まれた時は神道、結婚はキリスト教、死ぬ時は仏教と他宗教といたってフレキシブルに共存して生活する日本人の感性からすると、楽しみが増えるのであればそこまで堅く考えなくても、と思ってしまいがちです。そんな日本人の解釈が不真面目なのか、寛容的ととらえるのかは別として、「dolcetto o scherzetto=trick or treat!」、 と叫ぶ子どもたちの声が、小雨が降る暗闇の影から聞こえると、日本人のお人好し精神がかき立てられて論争関係なくキャンディーを配りまくった一晩となりました。


パン屋のウィンドーにも魔女の飾り
パン屋のウィンドーにも魔女の飾り

朝市でも菊の花がいつもより多く売られていました
朝市でも菊の花がいつもより多く売られていました

御墓参りに行く人達が目立っていました
御墓参りに行く人達が目立っていました

ライター紹介

ただの知代(ただのちよ)
イタリア在10年、大学生の長男筆頭に下の二人は男女双子の三人の母親です。
お料理も大好きですが、クッキングよりも食文化に興味もっているので、そんなことをテーマに書くのが好きです。

イタリア、コモ市。
コモ(Como、コーモとも)は、人口83,016人のイタリア共和国ロンバルディア州コモ県のコムーネの一つで、コモ県の県都である。
コモ湖を通じてスイスに接している。絹の産地として有名。


「”コモ”」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
最終更新 2012年8月30日 (木) 12:50
URL: http://ja.wikipedia.org/