ピエディバスの通学事情





Italy~Como

太陽の光線もすっかり肌に優しくなり、満開に咲いたキンモクセイのうっとりする甘いかおりが歩く道を追いかけてくる、そんな季節になりました。

新学期が始まり、学校が始まる朝8時前後の交通量が突然増えました。新学期初日、校門前は不安げな表情の新入生を送りにきた親たちの違法停車する車でごった返しの大騒ぎ。その光景を見たドイツ出身のおかあさんが、「私が育ったドイツ北部ではどんな天候でも子ども達は自転車通学するので、車で送り迎えするイタリアンママの過保護ぶりにあきれる」と呟くと、「整備された自転車レーンがないから危ないし、かといってイタリアでは新たに道を簡単に作れないのよ!」とイタリアンママはすかさず反論。過保護ママの部類に括られのも困るけど、歩道は狭くて通れないので、車道で車の間を縫うように走る自転車の様子を見ると、たしかに危なくて自転車通学させるのは覚悟がいるものです。実際、歯の形成外科医によると、重傷な怪我で運び込まれる患者の最も多い原因が、自転車の事故なのだそうです。これは、母親にとっては気がかりな事実です。

日本に帰国して感心したことは、一人で通学する子供たちの姿。小学校に入学した時点で通学においては”自立”という切符を手にします。「小学校入学とともに突然一人で学校に通うことになる根拠が理解できない」と、以前、日本に住むアメリカ人のお母さんが話していたのを思い出しました。地元の学校に徒歩通学するのならまだ解りますが、ラッシュ時に人混みをかきわけて、電車を乗り継いで通学するとなると6歳の子どもにとってはかなり大きな責任にうつるようです。公共機関が発達していて、街が安全だから可能とはいえ、監視の目が突然なくなる状況で大都会の迷路を行き来するのですから。交通機関を自由に乗り降りできるようになる自信を育むことも、子供の成長へとつながるのは確かです。そういう意味では日本の子供達はいち早く自立への一歩を踏み始めるわけですが、その機会が小学生に進級した時点で当たり前のように訪れることに外国のお母さんには戸惑いを感じるのかも知れません。

イタリアでは12歳になると中等部に進級し、徐々に一人通学の切符を手にします。それまでは親、または保護者が学校への送り迎えをすることが義務付けられているのです。共働きの親が多く、彼らは車での通勤の途中に子供を送り迎えするので、必然的に学校前は車で混雑するわけです。そんな対策として最近地域別に導入されているのが、“ピエディバス(=歩くバス)” 運動。学校圏内の地域に“フェルマタ(=停留所)”を数カ所設け、その場所で待っているとボランティアの大人が来て児童たちを学校まで誘導してくれます。全ての停留所を経由にして行くので、しだいに子供の列は長くなる仕組みです。ピエディバスの目的は “みんなで通学する楽しさ”、“交通量を減らし、公害を減らす”、“歩く事によって体を鍛える”こと、と共感できることばかりです。それに加え中等部に進学した後、一人で通学できるようになるための予備練習にもなるのではないでしょうか。学校が始まる早朝8時前後になるとボランティアの人たちに誘導されるピエディバスの光景を見かけます。

14歳になるとイタリアの子供達は更なる自立への切符を手にいれるチャンスが訪れます。と、いうのは単車50CCの免許をとる資格を得るからです。イタリアの街の光景を象徴するスクーターでの通学は、母親の心配の種が増えますが、子ども達にとっては大人になる過程へ一歩前進することになるわけです。そう思うと、イタリアでは、ピエディバスに参加して元気に通学する無邪気な幼少期が、親としては一番安心できる時期なのでしょう(笑)。


ピエディバスの停留所
ピエディバスの停留所

ピエディバス進行中
ピエディバス進行中

ピエディバス進行中

学校に向かっていきます
学校に向かっていきます

ライター紹介

ただの知代(ただのちよ)
イタリア在10年、大学生の長男筆頭に下の二人は男女双子の三人の母親です。
お料理も大好きですが、クッキングよりも食文化に興味もっているので、そんなことをテーマに書くのが好きです。

イタリア、コモ市。
コモ(Como、コーモとも)は、人口83,016人のイタリア共和国ロンバルディア州コモ県のコムーネの一つで、コモ県の県都である。
コモ湖を通じてスイスに接している。絹の産地として有名。


「”コモ”」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。
最終更新 2012年8月30日 (木) 12:50
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