オフシーズンの





人影まばらなオフシーズンの湖畔の町ベラージオ

人影まばらなオフシーズンの湖畔の町ベラージオ

「ここはオールシーズンの場所だから」。
以前出会ったオランダ人の老紳士が外交官として海外各地の任務を終えたあと、なぜ隠居生活をするのにコモを選んだのかを尋ねると、そう返事したことを思い出します。

スイスの国境にまたがるこの地域の地図を見ると、アルプス山麓帯が生み出す水の恩恵をうけ、沢山の湖が存在する豊な地域だということがわかります。中でもマジョーレ、ガルダ、ルガーノ、イゼオ、コモと5つの有名な湖がありますが、その中でコモが一番大きいわけでもなく、避暑地としてはもっと人気の湖もあります。

雨戸が閉ざされた店

雨戸が閉ざされた店

ヨーロッパの観光ホテルはオフシーズンになるとさっさと店じまいし、それにあわせて町の活気が一気になくなるような所もあります。そんな中少なくともコモ市に関しては、ミラノやスイス・ルガーノ市の通勤圏の位置にあることも貢献し、「一年通して人が生活しているリズムがあるから」、と紳士は語っていました。

ハリウッドスターの別荘があることにより避暑に訪れているところをパパラッチされる姿がニュースになる夏が過ぎると、今まで共用していた自分の庭を一人で満喫するようなそんな贅沢なオフシーズンになり、地元の生活がもどりホッと一息つけるような安らぎ感を与えてくれます。

カフェの椅子も冬眠中

カフェの椅子も冬眠中

クリスマス前のコモ市は、高騰したスイスフランが強みのスイスからの買い物客も便乗し、例年よりは賑やかな様子。クリスマスの一時的な現象とはいえ、不景気に悩む地元経済に活気を与え町中の店主たちは久しぶりの混雑もありがたいと口を揃えます。

そんな喧騒を後にし、オフシーズンの静けさを求めにきたのはコモ市内から湖畔沿いをくねくねした道路を走らせ30分ぐらいのところに位置するベラージオ。
この町は昔からミラノに住む人のセカンドハウスも多く、古くからドイツ、アメリカや英国人も夏の避暑地として目指してくる町です。

この町で唯一オープン中の数少ないお店はハンドメイドガラスのクリスマスオーナメントの専門店

この町で唯一オープン中の数少ないお店はハンドメイドガラスのクリスマスオーナメントの専門店

対岸からフェリーでも乗り付けられる位置にあり、船着き場から石畳の階段で丘を上る途中、地元のクラフトショップや有名ブランド品が揃うお店のフロントが並びます。
それでも”カテナ”と呼ばれる、大手チェーン店の進出を規制されていることもあり、洗練された雰囲気が人気で、夏は観光客で賑わいます。

どんよりとした雲が重くかぶさるヨーロッパの初冬の時期、小春日和を感じ観光シーズンの準備が始まるまでは雨戸が閉ざされ冬眠に入ったような町には、地元の人だけが道端で立ち話をしている姿しかない、オフシーズンの情緒が漂っています。

街中は人影もまばらですが、お店の中は賑やかでした

街中は人影もまばらですが、お店の中は賑やかでした

2015年のヨーロッパは激動に揺れた一年でした。今まで遠い場所で起きていたニュースとして見ていた動乱が、ヨーロッパで多発したテロ事件の影響で急にみじかに感じる一年でした。

イタリアは今のところテロのターゲットこそなっていませんが、アフリカの貧困や戦争を逃れてイタリアの南最短の島シチリアに流れ着く難民収容の問題がニュースになり始めたのは最近のことではありません。
今までは南の地方の問題として処理されていた難民の受け入を、全地域に分散する政策に変わり、コモにも収容所がもうけられました。
明らかに観光客ではない難民が、暑さしのぎに湖畔沿いを歩く姿が突然多くなり、小さな地方都市の町でさえも突然世界情勢に引っ張り込まれたかと思わせるようなそんな光景でした。

ハンドメイドのガラスのオーナメントが並びます

ハンドメイドのガラスのオーナメントが並びます

イタリアはもともと分裂していた小国が統一されて共和国として生まれた国、民族の移動は歴史の節目で常に起きていたことですが、難民としてきた人をどのように受け入れ、社会の中で統合するのか、考えられないような大きな課題です。

「停戦」、「平和」、「和解」、来年こそは、このような言葉がニュースの見出しに頻繁に登場することを期待したい、そんなことを考えながらオフシーズンのベラージオを後にし、沈む太陽の柔らかい光線におされるようにドライブしながら、人混みの中へと帰っていきました。

ライター紹介
ただの知代(ただのちよ) イタリア在10年、大学生の長男筆頭に下の二人は男女双子の三人の母親です。 お料理も大好きですが、クッキングよりも食文化に興味もっているので、そんなことをテーマに書くのが好きです。