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ガーデニングライフの賞賛:花と植物の祭典
夏の終わりを飾る恒例行事となっているイベント、「オルティコラリオ Orticolario」が10月最初の週末にコモ湖畔で開催されました。
花と植物の祭典、とでも言ったらいいのでしょうか、試みはロンドンの有名なチェルシーフラワーショーにも似ており、ガーデニングライフの様々な観点を紹介するイベントです。出展者の中心となるのが植物を育てている苗畑や園芸店。イタリアでは地中海の温暖な気候に恩恵をうけたリグーリアからトスカーナ地方の沿岸沿いに特に沢山の栽培者が集中しています。
その他にはガーデニングの機材やアウトドア家具業者の紹介、植物を材料としたマーマレードやお菓子の販売、リース等花のデコレーション作りのデモンストレーションや、子供むけのクラフトやミニガーデン作りと、250以上の出店者が集まり、天候にも恵まれたことにより来場者の数も昨年を大幅に上回る28,000人以上と、大盛況で終わりました。


今年で6回目を迎えたこのイベントの主役として選ばれた花が「アスター」。都会の花屋さんではあまり見かけない素朴な品種ですが、最小限の水分の補給で育つ事が狙いの「ドライ・ガーデン」の人気と共に最近改めて見直されている花の一つです。
ヨーロッパから、アジア、北アメリカと3大陸にまたがり250以上の品種が広く育成している野生の花ですが、イタリア語で別名settembrino(9月花)と言うそうで、植物の開花期最後となる秋のお庭でまさしく最後の舞台を飾る花の一種です。
今年の祭典のもう一つのテーマが「体感」。人間の官能機能を刺激する、見る、触る、匂う、という行為により、自然の中における様々な感触を体験する試みが、会場内のインスタレーションや、花や植物のエッセンスを使った石鹸や香水販売の出店に反映されていました。
自然とアウトドアライフを堪能するのに似たような試みは沢山あるかと思いますが、この祭典の最大の売り物は開催地の場所。第二次大戦後活躍した有名な映画監督で貴族出身のルキノ・ヴィスコンティの出生家の屋敷地内でもあり、現在はイベント会場として使用されているヴィラ・エルバがオルティコラリの本拠地。
更に今年は「境界を隔てて」というテーマのもとにヴィラ・エルバ会場外の6カ所にもインスタレーションが設置され、湖畔沿いの広範囲の地域が舞台となりました。この期間はコモ市内からも臨時船が会場まで出航し、”湖が自然を映す鏡になりながら”、とうたった宣伝文句の通り、立地条件を最大限に使ったイベントとなりました。ガーデニングに興味なくても植物に触れてみたくなる、そんな空間があっちこっちで展開されていました。






「持続可能性」。 日本語にすると難しい用語になってしまうコンセプトですが、「Sostenabilita (伊)Sustainability(英)」と言う言葉が最近新聞や雑誌でやたら目立ちます。限られた資源を有効に使い、持続させることが基本概念ですが、“自然を身近に感じ、感謝し、守る気持ちを育むこと”、そんな事を目的とした取り組みです。
庭いじりは苦手と思っていても、資源のサステナビリティの精神を育み、自然が生み出す恵みを敬仰する、そんな考え方に魅了されたイベントでした。
ライター紹介
ただの知代(ただのちよ) イタリア在10年、大学生の長男筆頭に下の二人は男女双子の三人の母親です。 お料理も大好きですが、クッキングよりも食文化に興味もっているので、そんなことをテーマに書くのが好きです。