思い出を搔き立てるレモンの香り





我が家自慢のレモンの木

我が家自慢のレモンの木

ちょっと自慢話です。我が家のレモンの木に実がなりました。たかがレモン?と、思われるかもわかりませんが、柑橘類が育つような環境で育ったわけではない外国人にとっては、植木鉢で自己流に栽培したレモンの木が育ったなんて、これは大きな達成感です。

レモンの花のツボミ。開花するとなんとも言えない甘い匂いが漂います。

レモンの花のツボミ。開花するとなんとも言えない甘い匂いが漂います。

私 たちが住むロンバルディアは山岳地帯。冬は零下になる日もあり、柑橘類が育つ環境ではありません。数年前引っ越し祝いにもらったこの木、扱い方が解らなくて、もらった直後は葉が全部落ち、すっかりみすぼらしい状態になってしまいました。「やっぱりね」と夫に苦笑いされ『捨てるしかない』とのあきらめの言葉に奮発され、『駄目で元々』と、思い切り切り込んでみると、新芽がつきました。まだ完全に枯れていないことがわかってからは夫の方が熱心に水をあげ、冬の間は家の中で陽のあたる場所にこま目に動かし、大事に育ててきた成果が実ったわけです。 元はアラブ諸国から海を渡りヨーロッパに来たのだろうと思われるレモンやオレンジは、今では地中海沿岸では豊富に栽培されており、特にイタリア特有の植物でもありません。イタリア内においても『シチリア以外のレモンはレモンではない』と自負するぐらいレモンにおいては優越感を誇るシチリアですが、アマルフィ沿岸や、北部でもリグーリア沿岸と海岸沿いの地域では競うように栽培されてます。クリスマスの時期になると、乾燥したレモンやオレンジの皮がクリスマスリースのデコレーションとしてよく見かけけられます。特に宗教的な意味があるわけではなく、昔は南部からきたエキゾチックなフルーツとして北部トスカーナやロンバルディアの上流階級の人がプレゼントとして送る風習に由来するものだそうです。ケーキやスイーツの材料としてはもちろん、レモン味のリキュール『リモンチェロ』や、かき氷のようなドリンク『グラニータ』と、特に 夏の風物として活躍しますが、レモン栽培の一番の使用目的は香水のエッセンスだそうです。 DSC_0133 それを聞いてなるほどと思うのは、スーパーでフルーツとして売られているレモンやオレンジだけを見て育った者にとって、木に実がなる以上の感激が開花した花から伝わる甘く美味しい香りなのです。オレンジもレモンも花は沈丁花の花のように枝から切るととっさに花びらが黄色くなり見栄えが汚くなるので、切り花としてテーブルに飾るよりも、枝の合間にのぞく小さい花が開花するのを心待ちし、風まかせに漂ってくるほんのりした自然の香りを楽しみます。 我が家のレモンの木をくれたリグーリア地方出身の友人は、今はロンバルディに住みながらも異常なこだわりをもって家でレモンの木を育てています。何故なのかと問いただしてみると、レモンの木には幼少の記憶と結びつくノスタルジアを感じるから、と説明してくれました。レモンの花の甘い香りが鼻につくと、海につりにいった帰り道や友達と自転車で走り回った海岸沿いの光景など、幼少期の夏の思い出が浮かぶ、と懐かしそうに話してくれました。 ある園芸家によると植木鉢でレモンの木を育てるのには、寒気から保護できる場所は必要条件ですが、それ以上に、根気と無限の楽観的意識が必要だそうです。葉が枯れても見捨てられなかった私の楽観と、丹念に水をあげ寒気から守った夫の根気のおかげで、毎朝窓を開けると伝わってくる甘い香りに魅了されてます。

リグーリアの庭園で見かけた奇妙な形の柑橘類“仏の手”。日本ではブッシュカンというそうです。

リグーリアの庭園で見かけた奇妙な形の柑橘類”仏の手”。日本ではブッシュカンというそうです。

ライター紹介 ただの知代(ただのちよ) イタリア在10年、大学生の長男筆頭に下の二人は男女双子の三人の母親です。 お料理も大好きですが、クッキングよりも食文化に興味もっているので、そんなことをテーマに書くのが好きです。

イタリア、コモ市。 コモ(Como、コーモとも)は、人口83,016人のイタリア共和国ロンバルディア州コモ県のコムーネの一つで、コモ県の県都である。 コモ湖を通じてスイスに接している。絹の産地として有名。 「”コモ”」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』より。 最終更新 2012年8月30日 (木) 12:50 URL: http://ja.wikipedia.org/