音楽の街に暮らしながら思うこと





Germany~Stuttgart

15年前、私は生涯で初めてドイツを訪れた。空港に迎えに来てくれたドイツ人の車に乗った瞬間のことを今でも憶えている。BGMがモーツァルトだったのである。一曲だけではない。延々とモーツァルトの曲が続いたのだ。日本人がクラシック音楽とひとくくりに呼んでしまいがちな曲達も彼によればドイツ人にとっては今でも身近な存在なのだそうだ。
縁があって、そんなドイツに私は約2年前から暮らしている。

かねてから「音楽の三要素」は仕事においても大事な要素であると思っている。「リズム」は客先やパートナーとの一体感や円滑なコミュニケーションを維持するために大事だ。逆に、一度失ってしまうとリズムを取り戻すのは一苦労だ。「メロディー」は主旋律。ぶれない意思と信念をもって自己の主張を通すことの勇気とその重要性は共通する。「ハーモニー」は協調性。チームワークを駆使すれば2つの個の力を合わせて3の力が発揮できる。そんな効果がハーモニーにはある。「音楽の三要素」を大事にすることを自分は心掛けてきた。

最近、もうひとつ大事な音楽の要素があると感じている。それは、「アドリブ」力だ。自然災害や元有名企業の経営破たん等、想定外のことが突然起こる現代社会だ。不測の事態に直面した時、「アドリブ」力を自然に湧き出させて苦境を乗り切る、そんな応用力の強さが必要だ。アドリブ力=実戦力、時として知識力より知恵力が勝ると言い換えることもできる。アドリブは練習では鍛えられない。実戦の中で身につける能力なので現場意識は常に大事だ。

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ドイツの某教会の写真です。時を告げる鐘を毎日休むことなく鳴らします。

昔、商売を仕事にしていた父から同じような言葉を聞いたことがある。当時の父の年齢に近付いてきた自分が今ようやくそんなことを思い出している。しかも、自分は異国に住み、あの頃からは数十年もの月日が経っているというのに。あの時父が伝えたかった教えが最近分かってきたように思う。15年前のドイツ人の彼のように、数世代にわたり人々がモーツァルトを聴き続けていることにはそんな理由があったのではないかとさえ感じている。


ライター紹介

笠原 詳二
ドイツ、シュツットガルト在住