日本の伝統 水の変態





歌詞は、文部省教科書の「高等小学読本」巻四から、和歌七首をそのままの順序で扱ったものです。和歌の作者は大和田建樹と思われます。この曲は、宮城道雄の処女作で、作曲者が数え年十六才(満年令で十四才)の時作曲。 最初は箏独奏曲として作曲されましたが、後に替手をつけています。曲の構成は、前弾-前唄-手事-中唄-手事-後唄という手事物形式をとっていますが、この曲が新様式の曲といわれるのは、従来の箏曲、地歌におけるような抽象的な、感情を抑えたものではなく、作曲者の感情表現、憧憬の描写に努力が払われているからです。前弾があって前唄は「霧の歌」と「雲の歌」です。続く最初の手事は「雨」を表現し、中唄は「雨の歌」と「雪の歌」及び「霰の歌」で、その間にそれぞれ合の手が入ります。二番目の手事は霰を表わし、チラシ風にしつくって、後唄の「露の歌」「霜の歌」に入ります。特に霰を表わす手付での左手の手法は、明治中期に大阪で行われていた「ツルシャン」にみられるより、はるかに高度な技巧を要するものです。

箏曲「水の変態」
宮城道雄(1894-1956):作曲
箏手本:村田章子 箏替手:芦垣美穗